草笛の音
2009年 05月 13日
「刑務所では、服役期間をただ過ごせばいいっていうわけではなくて、再犯しないように、心を癒すっていうこともしなければいけない」と(いう感じの内容のことを)おっしゃっていた。
住職さんが、忘れられないエピソードを紹介してくれた。
ある受刑者が、「自分の母親を供養してくれ」と言ってきたそうだ。
「住職さんの紹介するお話に母親のこととか、故郷のこととかがあって、色々思い出してたら、ある日天ぷらとか揚げ物が喉を通らなくなったんだ」と。
そこで住職さんが「お母さんがよく天ぷらを作ってくれたのかい?」と聞くと、
「そんなの作らねえよ」と言った。
自分の父親はよく暴力を振るって、ある日母親がタンスに頭をぶつけて、視神経が切れて全盲になった。それでも手探りで料理を作ってくれていた。しかし、天ぷらとかの揚げ物だけは、火事になると危ないから、よそで食べて来てね、と言われたのが忘れられないのだと。
それで、天ぷらを見ると母親のことを思い出して、ごはんが喉を通らないのだと。
私は犯罪を犯した人には出会ったことがないけれど、犯罪を犯す心境になってしまった、ということだけで、その人の心はもう散々に痛めつけられている、と思う。
だから許せる、ということは私の今の心境だとできないけれど、外に向かって怒れば怒るほど、自分自身が傷ついていく事実をわたしたちは時々思い出さなければならない、と思う。
「草笛の音」というお話がある。
暴れん坊の大男がやってくる村があった。村人たちが生け捕りにしようとしたが、うまくいかなかった。しかし、小さな子どもの吹いた草笛の優しい音色で、大男ははらはらと涙を流し、村人もそんな大男を見て警戒を解いた。その後大男と村人たちは仲良く暮らした、というお話。
この話には、
「自分自身の心は、脅かしたり傷つけたりすることで統御するのではない」
という教訓がはいっている。
「平凡な暮らしのなかの、もっと平和的で、もっと小さな気づきを用いて、もっと楽しい方法によって」人の心の中は穏やかになる、というお話である。
ギスギスしてきたらときどき、自分の心を慰めないとね。
by tyukita
| 2009-05-13 14:36
| 0903~目指せ独立不覊